1879年にパリ大学で医学博士号を取得したエアトン夫人のことは、以前ここに書いたが、ジャック・レオナールによると、パリ大の女性の医学博士の第一号は1875年のことらしい。
レオナールの本に引かれていたのは『19世紀の女性医師La femme-medecin au XIXe siecle』という1888年の著作だが、その著者がジャック・ベルティヨン夫人(カロリーヌ・シュルツCaroline Schultze)となっていたから驚いた。この著作自体も医学博士論文として書かれたもののようだ。
ジャック・ベルティヨンは、ご存知アルフォンス・ベルティヨンのお兄さんである。幼少時は弟のベルティヨンが出来損ないで、高校を放校になったり、父の紹介でようやく警察に仕事を見つけたりしていたのに対して、兄のジャックは優秀で、医師であり人類学者である父のルイ=アドルフの血筋を受け継ぐエリートだったのだが、このジャックの奥さんも相当優秀な人物だったようである。
ジャックとカロリーヌの間に生まれたのがシュザンヌ・ベルティヨンだが、このシュザンヌが、父でも母でもなく、叔父のアルフォンスの伝記を書いているというのも面白い。


Jacques Leonard, Medecins, malades et societe dans la France du XIXe siecle, Paris, Sciences en situation, 1992.
http://www.amazon.fr/dp/2908965011/


BIUMのサイトに、フランスにおける女性の医学界への進出についてをまとめたページがあった。
http://www.bium.univ-paris5.fr/histmed/medica/femmesmed.htm


これによると、1875年に女性として博士号を最初に取得したのは、マドレーヌ・ブレス(ブレ?)(Madeleine BRES)で、その博論のタイトルは『哺乳類と授乳(De la mamelle et l'allaitement)』。BIUMのページにはカロリーヌ・シュルツについても言及がある。エアトン夫人の、日本人の体格に関しての博士論文は、なんとデジタル化されて参照できるようになっていた。
http://web2.bium.univ-paris5.fr/livanc/?cote=TPAR1879x535&do=livre


カロリーヌ・シュルツの博論もやはりデジタル化されていた。
http://web2.bium.univ-paris5.fr/livanc/?cote=TPAR1888X049&do=livre