kazumichi_h2007-11-07

J. Paul Pundel, Histoire de l'opération césarienne, Bruxelles, Presses académiques européennes, 1969.


帝王切開史」が届く。入手がなかなか困難だったのでうれしい。


帝王切開というのはキリスト教世界において中世から広く実施されていたのだが、妊婦が死亡した場合に子供だけを取り上げる方法として実践されており、時代が下ると生きている妊婦での実践例も報告されるようになるのだが、その場合でも妊婦はほとんど死亡していた。現在のように母子ともに危険のない帝王切開ができるようになったのは、19世紀後半になってからのことにすぎない。
そして死亡した妊婦からわざわざ帝王切開で子供を取り上げても、この子供もすぐに死んでしまう場合がほとんどだったようである。ならばなぜわざわざ帝王切開なんてしたのかというと、洗礼を施すためなのであった。生まれた時点ですでに死んでしまっている子供には洗礼を施すことが許されず、結果として教会の墓地への埋葬も禁じられてしまうので、なんとか生きているうちに取り出して、洗礼を施そうとしたわけである。
そしてこの技術のために、妊娠何ヶ月以上の胎児から洗礼を施してもよいか(つまり何ヶ月以上から「人間」として認めるか)という議論も生まれるのだが、現代の体外受精なんかで問題になる議論との類似に驚かされる。