2008年5月4日に発表された政令(デクレ)により、フランスで指紋情報入りのチップの組み込まれたパスポートが導入されることが決まった。


これは2006年6月12日の欧州委員会の決定に沿ったもので、この決定によれば加盟国は2009年6月28日までに、指紋情報入りのパスポートを導入しなければならない。ドイツはすでに昨年の11月1日から、この新しい規定に沿ったパスポートの発給を開始している。
http://www.bmi.bund.de/cln_012/nn_1176866/Internet/Content/Nachrichten/Pressemitteilungen/2007/10/Ankuendigung__E-Pass__en.html


周知のようにアメリカのUS-VISIT法などが背景にあるわけだが、アメリカのパスポートにはまだ指紋情報は含まれていない。パスポートに指紋が用いられた例が過去にあるのかどうかは、きちんと調べてみなければならないが、少なくともICチップに指紋情報が入ったのは、このヨーロッパの例が最初のものだと思われる。


フランスのものはサジェム(Sagem)(フランスの電子機器会社)の子会社が引き受けることになったそうだが、少し面白いのは、指8本分の指紋情報が採取されることになっている点。EUの決定では両人差し指の2本を採取するとされていて、ドイツのものも2本のみ。
『ルモンド』の関連記事↓
http://www.lemonde.fr/archives/article/2008/06/20/la-biometrie-est-en-premiere-ligne-d-une-bataille-politique-et-industrielle-internationale_1061058_0.html


アメリカの入国審査は最初は1本だけだったのがやがて10本指になり、先日から日本でも始まった外国人の指紋採取は、両手人差し指の2本。1本やら2本やら8本やら10本やら、各納入企業の思惑もからんで規格にばらつきが出ているようだ。


*追記
20世紀初頭にブラジルのパラナ州が発行していたパスポートには、右手親指の指紋が採取されていたようである。1908年のArchives d'anthropologie criminelleに、この種のパスポートのフランスへの導入を勧める記事が出ている。

Cf. Pierre Piazza, Histoire de la carte nationale d'identité, Paris, Odile Jacob, 2004, p. 109.