フランスで人体展「Our body」に中止命令が下されたというニュースは、「型どり」の観点からも注目しておくべき出来事なのかもしれない。


今回の展示で用いられているのは、日本の「人体の不思議」展などと同じ、グンター・フォン・ハーゲンスによる「プラスティネーション」と呼ばれる技術である。人体の水分をポリマーによって置き換えるというこの技法は、人体の形を、人体とは別の物質によってそのまま残す技術であるという点で、ある種の「型どり」であると言えるだろう(「型」が完成した時点で「オリジナル」は消失してしまうという点では、本来の「型どり」とは異なる面もあるのだが)。


「型どり」が引き起こしたスキャンダルということでは、ロダンのデビュー作『青銅時代』や、クレザンジェの『蛇にかまれた女』(オルセー美術館蔵)などの系譜に連なるものだとも言える。


「人体」と「展示」の問題としては、蝋人形や、19世紀の「モルグ」との関連も考えてみる必要がある。今回のケースでも引き合いに出されている、アルフォール美術館のオノレ・フラゴナールの「エコルシェ」も思い浮かぶ。
http://d.hatena.ne.jp/kazumichi_h/20070416


パリで展示されていた「死体」のいくつかは以下のルモンドのサイトで紹介されている。主催者側は「科学的・教育的」側面を強調する一方で、「死体」に挑発的なポーズをとらせたりと、確かに少しいかがわしい(それが展示を中止させる理由にはならないが)。
http://www.lemonde.fr/a-la-une/portfolio/2009/02/19/lecons-d-anatomie-au-c-ur-de-paris_1157440_3208.html


中止を求める訴えを裁判所に提出したのは、死刑廃止を訴える団体で、今回の展示でも中国の死刑囚の死体が用いられているという疑いがあるのを問題視しているようだが、判決自体は死刑云々以前に、死後の身体のこのような扱いが、そもそも人権侵害である、という結論に達したようである。


「Our body」展(判決を受けて展示は一時的に中止されているようだが、サイトは生きている)
http://www.ourbodyacorpsouvert.com/accueil.php

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