全身スキャナー技術がにわかに話題になっているが(アメリカの空港では
すでに導入していたところも多いのだが)、いったいどんなイメージが
写し出されるのか。見本として流通している画像は多種多様である。



2008年の『ルモンド』の記事に載っていて、今でも見かけるこの映像は、
太めの女性のシルエットだけがのっぺりと写し出されて、ご丁寧に
大きなおしりの上にはピストルが乗っかっていたりして、どうも
作為的である。本当にこんな都合のよいイメージが写るのだろうか。
頭蓋骨の口元がにやりと笑っているように見えたりするのも不気味である。
http://www.lemonde.fr/europe/article/2009/12/28/securite-aerienne-l-europe-resiste-encore-aux-scanners-corporels_1285575_3214.html


アメリカ運輸保安局(TSA)のサイトには二種類の技術による画像が
紹介されている。ひとつはMillimeter Waveで、「ミリ波」と呼ばれる
電磁波を、回転しながら全身に照射するというイメージング技術。
回転する動きがスキャナーっぽいからスキャンと呼ばれるのだろうが、
そもそも「スキャン」とは語源的にはどういう語なのであろうか。
ラテン語のscandereに由来するようで、もともとは「詩の韻律を調べる」
というような意味で用いられていたようだが。


もうひとつは古典的なX線写真の技術に基づくBackscatterというもので、
体の前と後の2枚の映像を撮影するもの。(X線を用いると言ってもこれまでの
X線写真とはまったく異なる技術なようなので「古典的」という言い方は正しく
なかったかもしれません。)

http://www.tsa.gov/approach/tech/imaging_technology.shtm


昨年末のテロ未遂以降、急激に導入の動きが早まったこれらのスキャナーだが、
そもそも今回の事件で用いられた、粉末状の爆薬を下着に縫い付けるという
手法は、これらのスキャナーがあれば検知できたのであろうか?
本当に有効であるのかどうかははっきりとしないまま、「テロ対策」の
名のもとに高額な機器が納入されていくという、いつものパターンなんじゃないか。


デジタル・イメージと「スキャン」の関係というのも興味深い。
「パノスキャン」社の製品は360度のパノラマ・イメージを
スキャンによって撮影するものだが、同社はこの技術を犯罪現場の
撮影用に開発しているようなので驚いた。なかなかベルティヨン的である。

http://www.panoscan.com/