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ラファエル・マンドレシ(Rafael Mandressi)『解剖学者の眼差し:西洋における解剖と身体の発見』
6年くらい前に出た直後に買っていた本をようやくきちんと読み始めたが
非常に面白い。
中世末期(13世紀末)に西洋においては解剖の実践が始まったのだが、
これまでの歴史記述では、「なぜそれまでなかったのか」という問いから出発して、
その原因が例えばカトリック教会による禁止などに求められてきた。
しかしマンドレシはこれまで解剖の不在の原因とされてきたものが
いずれも不十分であることを示して、実はそれまでも解剖は特に
禁じられていたわけではなかったということを明らかにする。
その上で彼は、「なぜ解剖などというものを始めるようになったのか」
というふうに問いをシフトさせて、「解剖をすれば身体の真理が明らかになる」
という医学の前提自体を相対化させていく。
新しい研究成果を反映させた解剖の歴史入門としても読める一方で、
議論の進め方がとてもスリリング。


著者のマンドレシはウルグアイ生まれで、この本が出た当時はモンテヴィデオ大学で
教鞭を取っていたが、今はパリのコイレ・センターに移っているはず。


なおスイユ社の『身体の歴史』(邦訳は藤原書店より刊行予定)第一巻には、
マンドレシによるこの本の要約的な論文が収められている。