BNの複写サービスで取り寄せた資料を読む。ルジュモー・ド・ケルガラデク(J.-A. Lejumeau de Kergaradec)による、「妊娠研究への聴診の応用」(Mémoire sur l'auscultation appliquée à l'étude de la grossesse)。聴診器を使って胎児の心音を初めて聞き分けたケルガラデクによる、1821年の医学アカデミーでの報告である。以下のような箇所は歴史的発見の現場の雰囲気が伝わってきて興味深い。

L夫人は妊娠の末期に差し掛かっていた。ある日私が胎児の動きをたどろうとしていたところ、これまで気にしたことのなかった音に突然気づかされた。近くに置いた時計の音が聞こえたのだと思った。腹部から耳を遠ざけると、たちまち音はしなくなった。最初は幻聴かと思った。しかしもう一度近づいてみると、同じ音が聞こえたのである。

しかし胎児の心音くらい、聴診器がなくても、耳を当ててみれば聞こえるんじゃないかという気もしなくもない。とはいえ聴診器により微妙な音を聞き分けることにより、逆子や子宮外妊娠、あるいは双子などが生まれる前に診断できるのではないかと推測されており、先見的な研究であったことは確かなようだ。(性別の判定は残念ながら難しいとの指摘もある。)