新しく出たアルチュール・バテュのカタログを入手。
Serge Nègre, Arthur Batut. Regards d'un humaniste photographe (1846-1918), Toulouse, Privat, 2008.

合成肖像や凧写真など貴重な図版が豊富だが、
バテュの文章が出典の明示のないまま引用されていて、
けっこういい加減な作りである。

文献リストの中に
Murooka Katsutaka, Kite Photography, 1989.
とあり、調べてみると室岡克孝さんという方で、
現在でも凧写真を実践する第一人者のようだ。


日本カイトフォトグラフィー協会(JKPA)というのもあった。
http://www.interq.or.jp/japan/jkpa/


「カイト・フォトグラフィーとは?」のコーナーにバテュの名も挙げられていた。
(しかし「アルベルト・バチュー」となっている。)


入門書などもいくつか出ていた。

風の眼フォト―カイトフォトグラフィーの楽しみ方

風の眼フォト―カイトフォトグラフィーの楽しみ方

カイトフォトグラフィー

カイトフォトグラフィー


合成肖像と言えば、ギンズブルグ『歴史を逆なでに読む』の最終章(ピカソについての章)にゴルトンの合成肖像についての言及が一言だけあり、そこにつけられた注に「近く刊行の論文を参照せよ」みたいなことが書かれているのだが、その論文というのがおそらく以下。


Carlo Ginzburg, "Family Resemblances and Family Trees: Two Cognitive Metaphors", Critical Inquiry, 30, 2004, p.537-556.


写真技術としての合成肖像というよりも、フロイトヴィトゲンシュタインベイトソンらに与えた思想的インパクトに焦点を合わせた論文。
ヴィトゲンシュタインがゴルトンの合成肖像に言及していたとは知らなかった。
文献学における系統樹に話が飛んで、ヤコブ・ベルナイス(フロイトの義理の叔父の文献学者)を橋渡しにして合成肖像に話を戻す議論は、アクロバティックで非常に魅力的だが、最後はちょっと尻切れトンボの印象を受ける。

歴史を逆なでに読む

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