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『世界』の今月号は読み応えのある記事が多く、ここ数号と比べてみてもかなりのヒットである。
http://www.iwanami.co.jp/sekai/index.html

サブプライム」「給油問題」から、沖縄の集団自決の記述をめぐる「教科書問題」、さらには「朝青龍」から「ロストジェネレーション」まで。


とりわけ興味深く読んだのが、神野直彦氏による「経済を民主主義の統御のもとへ」。グローバル化のなかで、富める者はますます富み、貧しき者たちはますます貧しくなる。富を増やせばそのおこぼれが貧しい者にも回ってくるという「トリクル・ダウン効果」も、幻想に過ぎない。しかし分析はこのような悲観的な地点にとどまることなく、グローバル化の描く未来が富める者にとっても「薔薇色ではない」ことを明らかにする。なぜなら「万国の株主」は団結することができないからである。彼らはやがて「富を保護してくれる」はずの権力をも壊してしまうだろう。「他者を蹴落とし」、他者を出し抜いて、競争に運よく勝利したとしても、荒廃した社会のなかでは、市場から購入した武器を頼りに、牢獄のような要塞に立て篭もるしかないだろう。神野氏は、一部の富める者に未来を委ねてこのような世界を待ち構えるよりも、民主主義に未来の選択を委ねよ、とする。最終的に民主主義が出てくると、一見月並みな議論にも見えてしまうが、この民主主義があくまで「ローカルなもの」とされているのがポイント。


巻頭グラビアも今月のものはかなりよかったと思う。(安達康介氏による「洛中洛外景」)